Immich-Batterieberg

イミッヒ=バッテリーベルク

ドイツ / モーゼル

イミッヒ=バッテリーベルクの「イミッヒ」は、1425年から醸造所を切り盛りしてきたイミッヒ家に由来する。そして「バッテリーベルク」は、19世紀半ば、モーゼル川沿いの急斜面を爆破して、ブドウ畑を造成した際の轟音を、砲兵隊Batterieの砲撃に例えたことに因んでいる。そして2009年から、ザールのファン・フォルクセン醸造所で2003年まで醸造責任者だったゲルノート・コルマンが、経営と醸造を担っている。
19ヘクタールのブドウ畑の大半が、1868年のプロイセン王国政府の格付け地図で、グラン・クリュに格付けされている。急峻なブドウ畑で、樹齢80年以上の自根の古木が多い。その収穫物であるブドウは、9世紀まで遡る醸造所の地下にある、玄武岩の柱が支える石造りのセラーで醸造される。亜硫酸以外の添加物を一切使わずに、野生酵母だけで発酵した、目の覚めるような味わいのリースリングである。

ミッテルモーゼルについて

ベルンカステラー・ドクトールやヴェーレナー・ゾンネンウーアなど、よく知られたブドウ畑が集中するミッテルモーゼルには青色と灰色の粘板岩土壌の急斜面が多い。あまりにも傾斜が急なため、伝統的な棒仕立てでしか栽培出来ない畑も少なくない。栽培は全て手作業で行わなければならないが、世界中探しても他にはない高貴な味わいのリースリングが出来る。所有面積3ha以下の小規模生産者が多い一方で、1990年代までは著名醸造所の有名な畑のワイン以外は手間に見合うだけの値段で売れず、耕作放棄された畑も多かった。しかし2000年頃から若者や異業種からの転職者がそうしたブドウ畑を入手し、素晴らしいワインを醸造して注目された。また、急斜面ではヘリコプターで農薬を散布するため、有機農法は他の生産者との衝突を招くことが多かったが、それでも一部に1970年代から信念を貫いて有機農法を行ってきた生産者もいる。近年はオレンジワインや亜硫酸無添加醸造に挑戦する生産者も登場して、閉鎖的で悲観的と揶揄されることのあった地域のメンタリティが変わりつつある。

モーゼルについて

モーゼル川はフランスのヴォージュ山脈に水源がある。ルクセンブルクを通過してドイツに入ると、それまで比較的まっすぐ流れていたのが蛇行をくりかえすようになり、やがてライン川に合流して旅路を終える。ドイツのブドウ畑はルクセンブルクとの国境から始まるが、ザール川との合流地点までの地区を「オーバーモーゼルObermosel」、そこからシュヴァルツカッツ(黒猫)で知られるツェルの手前までを「ミッテルモーゼルMittelmosel」、ツェルから河口までを「ウンターモーゼルUntermosel」と称するが、この下流域は極めて急な斜面に段々畑のようにブドウ畑があることから「テラッセンモーゼルTerassenmosel」(テラス状の畑があるモーゼル)とも称する。そしてザール川やルーヴァー川など、モーゼル川支流の渓谷にも優れたブドウ畑があることを忘れてはならない。この生産地域全体を特徴づけているのは、約4億年前のデヴォン紀に生成した粘板岩(英語:Slate、ドイツ語:Schiefer)土壌の急斜面のブドウ畑で栽培されるリースリングである。冷涼な気候による気品のある酸味と甘味のバランス、ブドウ畑や生産者により異なる様々な風味が魅力となっている。

ドイツについて

ヨーロッパの伝統的ワイン生産国の中でも最も北に位置し、冷涼な気候による酸味と甘味のイメージが支配的だった。近年は温暖化の恩恵を受けてフランス系品種も毎年完熟し、若手醸造家を担い手とした辛口ワインの高品質化がめざましい。ブドウ畑は旧東独の2生産地域を除いてフランス寄りの南西部に位置し、大半がライン川とその支流に広がっている。東部に位置する産地は大陸性気候の影響で夏は暑さと乾燥が、冬は寒さが厳しいが、南西部では海洋性気候の影響を受けて春から秋に雨が降るため、水はけの良い土壌や斜面が高品質なブドウ栽培の条件のひとつとなっている。主要な土壌は約4億年前に生成した粘板岩と、それから約2億年後に生成した雑色砂岩、貝殻石灰質、コイパーから成る三畳紀のトリアスである。前者は北西寄りのラインガウからアールにかけて分布し、リースリングとピノ・ノワール(=シュペートブルグンダー)に独特の個性を与えている。後者は南部のバーデンから東部のフランケンにかけて分布し、ピノ(=ブルグンダー)系の品種とジルヴァーナーやリースリングに優れたものが多い。

Detonation bubbles – Riesling Sekt Extra Brut
デトナチオン・バブルス リースリング・ゼクト・エクストラ・ブリュット

品種:リースリング100% 
位置:標高280m、南西向き、斜度約 40度
土壌:灰色・赤色の粘板岩 
醸造 ベースワインはステンレスタンクで 7ヵ月間発酵 約2年3ヵ月間瓶内熟成 瓶内二次発酵、ドサージュなし

シュテッフェンスベルクの新たに入手した区画(標高の高い場所にあり、樹齢はやや若く25歳前後)のリースリングを使用。

Jour Fixe – Spätburgunder Rosé Brut Nature
ジュール・フィクス シュペートブルグンダー・ロゼ・ブリュット・ナチュール

品種:シュペートブルグンダー100%
植樹:1990~2005年
位置:南~南西向き
土壌:灰色・赤色の粘板岩 
醸造 全房圧搾後、ステンレスタンクで野生 酵母により発酵 ステンレスタンクで11ヵ月間シュールリー熟成後、瓶内で2年間熟成 瓶内二次発酵

ドザージュなしの、ロゼ・スパークリ ングワイン。 ブドウは、90%ブリーデラー・ヘル ツヒェン、10%モンテノイベルの畑 から収穫される。

CAI – Riesling Kabinett trocken 2022
シー・エー・アイ リースリング・カビネット・トロッケン

品種:リースリング100%
植樹:1960~1995年
位置:標高130~300m 南西・南・南東向きの斜面
土壌:灰色・赤色・青色のデヴォン紀 粘板岩
醸造 マセレーションは数時間程度 ステンレスタンクで野生酵母により発酵、澱引きせずに9ヵ月間シュールリー熟成 瓶詰直前まで亜硫酸塩は添加しない 発酵温度の調整もしない。

CAIは、バッテリーベルクの畑を造成 した当時の醸造所オーナー、カール・ アウグスト・イミッヒに因む。エント リーレベルのワインとはいえ、ゲル ノートの持ち味である、肌理の細かいテクスチャーや味わい深さは十分に感 じ取ることが出来る。 原料となるブドウは大半が契約栽培農家のブドウ。8軒の栽培農家から毎年同じ畑のブドウを納入してもらっているが、2030年までにすべて自社畑の ブドウにすることを目指している。
¥3520

Detonation Riesling 2022
デトナチオン・リースリング

品種:リースリング100% 
植樹:1960~1995年 
位置:標高130~300m 南西・南・南東向きの斜面 
土壌:灰色・赤色・青色のデヴォン紀 粘 
醸造 マセレーションは数時間程度ステンレスタンクで野生酵母で発酵し、澱引きせずに9ヵ月間シュール リー熟成。瓶詰直前まで亜硫酸塩は添加しない。発酵温度の調整もしない。

当初エントリーレヴェルはCAIしか 造っていなかったが、タンクの中には ブレンドしてしまうのがもったいない 品質を感じるものがあり、2016VTから別にリリースすることにした。シーフードが好きなので、それにあうよ う、CAIよりもストレートでキレのあ る、より精緻で塩気を感じるワインが できるブドウ畑を選んだという。 ブドウの60%は自社畑で、ブリーデ ル村の畑の収穫が多い。30%はイ ミッヒの栽培家が所有するブドウ畑のもので、10%はドーロナー・ホーフ ベルクの自根の古木のもの。すべて 40年以上のブドウ樹のみ。
¥4180

ROB – Spätburgunder Rosé
アール・オー・ビー シュペートブルグンダー・ロゼ

品種:シュペートブルグンダー100% 
植樹:1990~2005年 
位置:南~南西向き 
土壌:灰色・赤色の粘板岩 
醸造 収穫後すぐに圧搾、ステンレスタンクで野生酵母により発酵 11ヵ月間シュールリー。

モーゼルの急斜面に植わるシュペート ブルグンダーの、ほんのりと薄いロゼワイン。柑橘系の明るい果実味に、タイムなどのハーブの香り。洗練されたスタイルだが、気軽に楽しめるトーンの味わい。ROBの意味は「Rose from Batterieberg」で、CAI と並ぶ位置づけ。ブドウは、10%モンテノイベ ル、40%ドーロナー・ホーフベル ク、50%ブリーデラー・ヘルツヒェンの畑から収穫される。

Enkircher Monteneubel Spätburgunder 2017
エンキルヒャー・モンテノイベル・シュペートブルグンダー

品種:シュペートブルグンダー100%
植樹:1998年
土壌:赤色粘板岩
醸造:果梗100%で、合成樹脂のコンテナでピジャージュしながら1ヵ月間マセレーション。容量225~300Lの木樽で2年間熟成。

「モンテノイベル」という畑名で栽培されているシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)。2年間の樽熟成により、余計な果実味やタンニンを落ち着かせた、端正なピノ・ノワール。2011VTはラベルデザインが異なり、白いエチケットでのリリース。
¥6820

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