La Torre alle Tolfe
ラ・トッレ・アッレ・トルフェ
イタリア / トスカーナ

ラ・トッレ・アッレ・トルフェは8世紀に建てられた塔(Torre)を中心に、できた貴族の郊外の別宅で、現オーナーのマニア・カステッリの曽祖父が二次大戦後に購入し、それ以来、オリーブオイルやワインの生産を行ってきた。古い貴族の別邸ということもあり、スペースは広く、13haの自社畑には十分な醸造設備がある。古い大容量のセメントタンクが多いのもこのワイナリーの特徴だ。2018年、長らくワイン造りを担当してきた醸造家が、トッレ・アッレ・トルフェを去ることが決まった。そこでその醸造家がオーナーのマニアに推薦をしたのが、ジャコモ・マストレッタだった。2016年に惜しまれながらも、閉業したキアンティ・ガイオーレのワイナリー、ラ・ポルタ・ディ・ヴェルティーネの元醸造家だ。ジャコモにとって初めての経験である、砂地でのサンジョヴェーゼの醸造。果実味とタンニンの表現が、石灰質土壌のそれとはまったく違うとジャコモは言う。確かに骨格よりも柔らかなタンニンが、印象的だが、果実味と酸味に彼らしい魅力が出ている。
キアンティについて
15世紀以来「キアンティ」という地名は北はフィレンツェから南はシエナまでの広大な地域を指す。標高800mまでの丘陵があるが、ワイン造りは250~500m前後の高度が中心。最初にキアンティの境界を定めたのは、1716年トスカーナ大公・コジモ3世。1932年に、広がり続けるキアンティの呼称に対抗し、9村・計7万haが“伝統的”区域としてクラッシコの呼称を得、その際の境界は現在も不動。キアンティ・クラッシコは長らく白ブドウのブレンドが必須だったが、サンジョヴェーゼ100%の認可は1996年以降。2000年には国際品種のブレンド率を20%まで引き上げた(DOCG初年の1984年は10%)。現在、生産者は約350社。この「キアンティ・クラッシコ」の周辺に広がる形でDOCGキアンティとして、ルフィナ、コッリ・セネージなど7つの地域が認定されている。この地域でも生産者の力量しだいで、高名なクラッシコに勝るとも劣らないワインも生まれている。
トスカーナについて
サンジョヴェーゼ品種の最重要生産地であり、その王国。20世紀末の短期間、主に伝統産地外の沿岸部などで、ボルドー品種とバリック新樽を用いた濃厚なワインが“スーパー・タスカン”と称され、世界を席巻したが、近年はよりピュアにサンジョヴェーゼの美点を追求する生産者に再び注目が集まっている。ただし区分したいのは“スーパー・タスカン”の中でもかつては主にキアンティ・クラッシコDOCG法外だった100%サンジョヴェーゼを敢行したゆえのワインたち。それらの生産者の中には、サンジョヴェーゼ100%がDOCG法認可された後も、IGTにとどまり偉大な深みを持つワインを生み続ける生産者が少なくなく、同じ“スーパー・タスカン”の中でもボルドー品種主体のものとは区別して把握・評価するべきだろう。また、この州の人々は歴史的に進取の気性に富み、常に探求と挑戦と共にワイン造りも変化する。その様子を、ヒュー・ジョンソンは「旧世界の中の新世界」とさえ評している。
Chianti Colli Senesi Riserva 2020
キアンティ・コッリ・セネージ・リゼルヴァ
品種:サンジョヴェーゼ100%
植樹:1960年代、2000年代
位置:330m、南東~南西向き
土壌:粘土石灰質
醸造:セメントタンクで醗酵。木樽で15ヵ月間熟成。一部栗ダルを使用
砂質土壌の多いコッリ・セネージの中でも、粘土石灰のニュアンスが強い土壌の畑を選び、栗樽での長期の熟成を試みる。栗樽はイタリアで古くから使われてきた樽の素材だが、いまではオークに替わられ一般的にはあまり使われなくなってしまった。ジャコモがラツィオの友人のワイナリーを訪れた際、気に入った栗樽を見つけその職人を訪ね、自分も使い始めた。オークより穏やかに香りを与えるため、ブドウ本来のもつ個性を残したまま熟成ができるとジャコモは考える。
¥5170
Chianti Colli Senesi 2022
キアンティ・コッリ・セネージ
品種:サンジョヴェーゼ主体、カナイオーロ、コロリーノ、チリエジョーロ
植樹:1960年代、2000年代
位置:標高330m、南東~南西向き
土壌:粘土石灰、砂質も多い
醸造:セメントタンクで醗酵。セメントタンクで10ヵ月間熟成
砂質のサンジョヴェーゼは、木樽で熟成をさせると、タンニンが強くなりすぎることが多いため、活き活きとしたニュアンスを出すためにセメントタンクでの熟成を選んだ。年によって、サンジョヴェーゼ100%で瓶詰めすることもあれば、カナイオーロやコロリーノをごく少量ブレンドすることもある。
¥3410
IGT Toscana Rosso – Canaiolo
トスカーナ・ロッソ カナイオーロ
品種:カナイオーロ100%
位置:標高330m、南東~南西向き
土壌:粘土石灰、砂質も多い
醸造:セメントタンクで醗酵。木樽で7ヵ月間熟成
豊かだが柔らかなタンニンと骨格を備えている。ともすると地味になりがちなカナイオーロだが、酸を意識したワイン造りをすることで、途端に魅力的になる。
IGT Toscana Rosato – Lunella
トスカーナ・ロザート ルネッラ
品種:サンジョヴェーゼ主体
植樹:1960年代、2000年代
位置:標高330m、南東~南西向き
土壌:粘土石灰、砂質も多い
醸造:ステンレスタンクで醗酵。ステンレスタンクで熟成
年によって、1/3をバリックで醗酵熟成することもある
イタリア中部で広く使われる、サラッソ(セニエと同義)と呼ばれる醸造テクニックによる、ロザート。2023VTはダイレクト・プレスで醸造した。ルネッラというキュヴェ名は当主であるマニアの曾祖母の名に由来。飲みやすいだけのロゼではなく、飲みごたえとうまみを備えている。
IGT Toscana Rosso – Ciliegiolo 2021
トスカーナ・ロッソ チリエジョーロ
品種:チリエジョーロ100%
植樹:1960年代、2000年代
位置:標高330m、南東~南西向き
土壌:粘土石灰、砂質も多い
醸造:セメントタンクで醗酵。木樽で7ヵ月間熟成
甘くふくよかな果実味と飲み心地の良いワインのできやすいチリエジョーロに、樽熟成で骨格を与えた。暖かい年には存在感と迫力のあるワインが出来る。トスカーナの中でも、比較的暑いマレンマ辺りに古くからある土着品種のため、この先の温暖化にも耐えうるのではないかとジャコモは期待している。
¥4290
IGT Toscana Rosso – Colorino 2021
トスカーナ・ロッソ コロリーノ
品種:コロリーノ100%
位置:標高330m
土壌:粘土石灰、砂質も多い
醸造:セメントタンクで醗酵。木樽で18ヵ月間熟成
名前の通り、色(コローレ)を与える品種としてキアンティエリアではブレンド品種とされてきた品種。果汁も赤いタンチュリエ系の品種で、最後の方に収穫される品種でもあり、濃い果実味と果皮の要素が非常に豊富。長期の熟成をかけることで、高揚感のある香りへと変化する。
¥4620
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