日本のジャーナリズムを問う 映画『新聞記者』

shinbunkisha

安倍政権で起きた森友・加計問題など実際に起きたこととフィクションが交錯し、徐々に現れて来るのは──。「今、作らなければならない、そして今、観なければいけない映画。固唾をのむようなサスペンスを体験させる若い藤井道人監督の技量に心からの賞賛を」(山田洋次映画監督)、「これは、新聞記者という職業についての映画ではない。人が、この時代に、保身を超えて持つべき矜持についての映画だ」(是枝裕和映画監督)とコメントを寄せた話題作だ。

原案は、東京新聞・望月衣塑子記者の同名ベストセラー「新聞記者」(角川新書刊)。著者はモリカケ疑惑、辺野古移設問題など政権にとって不都合な事実について、官邸記者会見で鋭い質問を発し続けるジャーナリストとして知られる。本作は、さまざまな妨害や中傷に屈せず、国民の「知る権利」を守るため取材を続ける彼女の姿勢にインスパイアされた完全オリジナル・ストーリー。メディアへの介入など現実社会とも共振する設定で、近年の日本映画が避けてきたタブーの領域に大きく踏み込んだ。

「2019年、新しい元号『令和』が始まり、参議院選挙、翌年に控える東京オリンピックの開催。かつて経験したことのないような時代の大きなうねりの中で、人々はどこからどのような情報を得ていかなければならないのでしょうか。(中略)この数年で起きている民主主義を踏みにじるような官邸の横暴、忖度に走る官僚たち、それを平然と見過ごす一部を除くテレビの報道メディア。最後の砦である新聞メディアでさえ、現政権の分断政策が功を奏し『権力の監視役』たる役目が薄まってきているという驚くべき異常事態が起きているのです」(河村光庸プロデューサー)。

最近ではネットニュースやTwitter等の躍進が著しいが、単なるニュース速報より、事実の解説や批評を含め、これからの社会や家庭の中心となる世代に向けたジャーナリズムはどこにあるのか。

「ジャーナリズム」の反対語は、特定の思想・世論・意識・行動へ誘導する「プロパガンダ」とも言われる。貧困や格差が拡大して、生活不安を抱えたままの分断社会を終わらせ、私たちの将来のための新しいジャーナリズムが求められている。

映画「新聞記者」
©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ
配給 スターサンズ/イオンエンターテイメント
出演:シム・ウンギョン 松坂桃李
監督:藤井道人
脚本:詩森ろば 高石明彦 藤井道人 音楽:岩代太郎
原案:望月衣塑子「新聞記者」(角川新書刊) 河村光庸