消費税はなぜ上がるのか。

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2019年10月、消費税率が8%から10%に引き上げられる。消費税増税は5年半ぶりだが、1989年4月の導入時に3%だった税率は確実に上昇している。消費税はなぜ必要とされ、税率はなぜ上がり続けるのか? 税制の問題点や税率の行方と合わせて解説する。

文 岩城由彦

消費税が導入された理由は?

一言で言えば、急速な少子高齢化への対応。増え続ける社会保障費の安定的な財源確保のために導入された。

所得税や法人税を引き上げるとなると現役世代に負担が集中しがちな上、景気が悪化すれば税収が減少する恐れもある。一方、消費税はここ10年ほど毎年10兆円程度の増収が続いている。

国民全体で広く負担し合う消費税は、2019年10月からの幼児教育・保育無償化などを含め、すべての世代が対象となる社会保障の財源にふさわしいと考えられている。

日本の消費税は高くない?

消費税は1953年にフランスの大蔵省官僚が考えた仕組みで、1960~70年代から世界の大半の国々で取り入れられるようになった。

日本でも1979年に当時の内閣が導入を閣議決定したが、直後の総選挙中に断念。1987年には現在の消費税に当たる売上税法案が国会に提出されたものの、国民的な反対の声を受けて廃案となった。結局、消費税は国民の強い反発を押し切る形で導入されたが、時の内閣の支持率は下がり、その2カ月後には総辞職に追い込まれた。

国民の反対に遭いながらも1997年4月に5%、2014年4月に8%へと引き上げられた日本の消費税率だが、ノルウェーやスウェーデン、デンマークといった高福祉国の標準税率は25%と高い。世界一のハンガリー(27%)をはじめ、EU(欧州連合)加盟国の多くも20%前後に設定している。

これらの国と比べると、日本国民の負担は決して重くないのではと思えるが、実はからくりがある。例えば、イギリスの標準税率は20%だが、金融、教育、医療・福祉などは非課税。食料品などの生活必需品はゼロ税率だ。家庭用燃料・電力の供給などには軽減税率(5%)が適用される。

ちなみに、日本の国税収入に占める消費税の割合は高税率の欧米諸国と同水準。このことからも、日本の消費税がどれほど多くの財貨・サービスに課税されているか、すなわち非課税品目がいかに少ないかが分かる。

消費税の問題点は?

消費税は誰もが買い物をするたびに適用される公平性がある半面、所得が低い人ほど重税感が増すという問題点も指摘されている。つまり、所得税は高収入の人ほど高い税率が適用されるのに対して、消費税は所得に対する消費の割合が高い低所得者ほど負担が大きくなるというわけだ。

こうした問題点を解消するため、日本でも10%への引き上げを機に飲食料品などの税率が軽減される。しかし「軽減」と言いながら、税率は現行の8%のまま。さらに、同じ商品でもイートイン(店内飲食)の税率は10%なのに、テイクアウト(持ち帰り)すれば8%となるなど「複雑で分かりにくい」という声も強く、当面は小売り現場などでの混乱が予想される。

将来の税率見通しは?

OECD(経済協力開発機構)は2019年4月の対日経済審査報告書で、日本の消費税は将来的に20~26%にするべきであると提言している。

理由は国と地方が抱える巨額の財政赤字。約1,100兆円もある借金がさらに膨らめば、世界経済にも悪影響を及ぼすことが懸念される。政府予算の支出で最大の割合を占めるのは医療や福祉関連、すなわち社会保障関連費だが、社会保障制度は国民生活にとって最も大切なインフラ。超高齢社会で経費を抑制するのは至難の業だ。

税率の引き上げは不可避?

OECDは対日経済審査報告書で、歳出削減の具体的な計画を立てて取り組むべきとも提言している。消費税率を引き上げるだけでなく、歳出削減にも取り組まなければ財政再建は立ち行かないというわけだ。

しかし、2020年度政府予算の概算要求は過去最大の105兆円程度に達し、歳出を切り詰める方針とは程遠い。

ここに、興味深い試算がある。国の財政制度等審議会によると、消費税率が10%になっても、2060年度のGDP比の債務残高を現在の200%から100%に引き下げるには、目前に迫った2020年代前半のうちに60兆円もの収支改善を果たさなければならないというのだ。

当たり前のことだが、必要性が低い公共事業や補助金などの無駄な歳出を減らせば、その分の税率は引き上げずに済む。例えば、東日本大震災の復興予算は2011年度から5カ年で33兆円余りが計上されたにも関わらず、5兆円が使われていなかった。

国のお金の使い道は、国民自身が決めるべきもの。日々の暮らしについて回る消費税の在り方は、日本の未来を担うミレニアル世代こそ真剣に考えなければならない問題なのである。

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