Christian Tschida
クリスチャン・チダ
オーストリア / ライタベルク / ノイジードラーゼー

オーナー醸造家のクリスチャン・チダは、実験的な醸造に積極的なオーストリアの醸造界の中でも異端児と呼びたくなる存在。醸造学校へ通ったこともなく、ワイン造りは祖父と父、そしてロワールとブルゴーニュの生産者達から独学で学んだというが、モットーは「レッセ・フェール」。放置して、自ずから調和に至らせる自由放任主義だ。2013年産から亜硫酸は添加していない。そしてノンフィルターで瓶詰めする。14haのブドウ畑をライタベルクの斜面に所有している。30近い点在する区画では栽培しているのは白はショイレーベ、ヴァイスブルグンダー、グリューナー・ヴェルトリーナー、ムスカート、赤はツヴァイゲルト、ブラウフレンキッシュ、カベルネ・フラン、シラー。ウィーンに住んでいた頃親交のあった画家アルフレート・フリドリチカ(2009年に他界)のエッチング作品『地上の楽園』Himmel auf Erdenをエチケットにした同名のワインの自由奔放さ、グリューナー・ヴェルトリーナーをマセレーションした「ノン・トラディション」の底知れないスケールの大きさ、「ドームカピテル」のカベルネフランの端正で繊細な深み。彼の造るワインは、いずれもが独自の世界を構築している。
ライタベルク / ノイジードラーゼーについて
ノイジードラー湖の北西部から湖の東岸のハンガリーとの国境までを含めたブルゲンラント最大のワイン生産地域。大きく三つに分かれ、①ライタベルクの北端にあたり、粘板岩や石灰質混じりの粘土、礫、砂があり冷涼な北西部。②湖北部のパンドルファー台地の裾野に帯状に連なる、高低差30mあまりの南西向きの、石灰質を含む砂利や粘土質土壌の斜面。③湖東岸のゼーヴィンケルと称される平野。年間日照時間は約2000時間でパンノニア平原からの熱風をもろに受け、遮るものがないので風が年間を通して吹くため風力発電用の風車が林立している。湖の周囲以外は黴が繁殖しにくいので有機栽培に向く。土壌は黒土と砂利と砂で池が多数あり、自然保護区となっている。③のゼーヴィンケルは1914年の運河開通で入植がはじまった地域で、かつてはとても貧しかった。1970年代から1985年までは貴腐ワインで潤ったが、1990年代には世界的な赤ワインブームの影響もあって赤ワイン用品種への植え替えが進んだ。1994年には高品質な赤ワインを目指す生産者団体パンノービレが結成され、高貴な甘口とともに優れた赤ワインの地域としても知られるようになる。現在は赤ワイン用品種が48.4%を占め、ツヴァイゲルトの栽培が最も盛んで24.0%(2017年)。次いでグリューナー・ヴェルトリーナーの10.4%、ヴェルシュリースリングの11.1%、ブラウフレンキッシュ9.3%、ザンクト・ラウレント4.2%と続く。
オーストリアについて
オーストリアのワイン生産地域は国土の東側周縁部に分布し、緯度はブルゴーニュのコート・ドールからアルザスのオー・ランに相当する。ワイン生産地域は大きく三つに分けることが出来る。①北部のアルプスの森林に囲まれドナウ川が横断するニーダーエスタライヒ。②パンノニア平原に接して大陸性気候の影響を強く受けるブルゲンラント。③スロヴェニアの山地と同様に起伏に富んだ地形で、地中海からの暖気とアルプスの冷気がぶつかるシュタイヤーマルク。いずれも暖気と寒気がぶつかりやすい立地条件のため、近年は遅霜や雹で深刻な被害を受けることが増えている。この国は歴史的にはハプスブルク家が君臨したオーストリア・ハンガリー帝国の中心地であったことがワインとそれをとりまく文化を育んできた。1985年にノイジードラーゼーの生産者による不凍液混入事件で甘口ワイン市場が壊滅するという逆境が、かえってオーストリアを、伝統に縛られずに高品質を目指す好奇心旺盛で個性的なワイン生産国へと変えた。ビオロジックで栽培されるブドウ畑も約12%とヨーロッパで最も普及し、生産量は世界の1%にも満たないが、ビオディナミや亜硫酸無添加醸造、オレンジワインなどに積極的に取り組む生産者も少なくない。
A・E・I・O・U
アエイオウ
品種:シャルドネ
植樹:1960年、2016年
標高:200~250m、南東向き
土壌:石灰岩、珪岩、粘板岩
醸造 マセレーションなし、野生酵母で発酵 。容量1200Lの木樽で澱とともに7ヵ月 間熟成 亜硫酸無添加、ノンフィルターで瓶詰め
A.E.I.O.U.はハプスブルク家の神聖ローマ皇帝フリー ドリヒ3世が好んで用いた略語句で、ウィーンのノイシュタット城やグラーツ大聖堂などの建物や、自身の食器などあらゆるものにこの文字列を刻んだ。だが、 その意味は長い間不明で、様々な解釈がなされてきた。2023年に歴史学者がその意味を解明したと発表し た以下の説に、チダが惹かれ、ワイン名に選んだ: Amor Electis Iniustis Ordinor Ultor 選ばれし者達に愛され、無法者達から恐らるる/嫌わる る。「ワインが好きな人は分かるし、そうでない人はわからない」という意味。ブドウ畑はライタ山地にあるノイジードラーゼーに面した急斜面にある。丘の上部で土壌はシスト。ブドウ 樹を2本ならべて植えることで互いを競わせ、深く伸びた根が水、ミネラル、養分を取り込むようにしている。
¥17,600
Kapitel Ⅰ
カピテル 1 [アインス]
品種:カベルネ・フラン主体、ブラウ フレンキッシュ少々
植樹:1960~1998, 2007年
位置:標高130-240m、南東向き
土壌:Tenauの畑 (石灰質、礫)
醸造 手作業で収穫後、除梗し、開放桶で足で破砕、野生酵母で6週間マセレーション発酵 圧搾後、大樽(2600L)に入れて、澱とともに熟成 ノンフィルター、清澄なし、亜硫酸無 添加で瓶詰め。
“KAPITEL”カピテルは昔ブドウ畑が、区画を番号で分割させられていたときの呼称。このワインのブドウが収穫されるのはKapitel Iと呼ばれる区画だった。 2016VTはカベルネ・フランのみ、ブラウフレンキッシュの割合は年によって異なる。(2019VT、2020VT は10%)
¥4,600
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