Ernst Triebaumer
エルンスト・トリーバウマー
オーストリア / ブルゲンラント

トリーバウマー家の初代はルター派の宗教難民として1691年にルストに移住し、代々農業を営んできた。世間に知られるようになったきっかけは1988年、雑誌ヴィナリアVinariaが世界の赤ワインをテーマにした品評会で、エルンスト・トリーバウマーの父が1960年代に植樹し、エルンストが醸造した1986年産ブラウフレンキッシュ「リート・マリエンタール」の優勝だった。このワインは現在もオーストリアでは伝説のワインとして語り継がれている。ルスト周辺は本来貴腐ワインのルスター・アウスブルッフの名産地として知られているが、トリーバウマーは約20haのブドウ畑のうち75%を赤ワイン用品種(50%ブラウフレンキッシュ、残りはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなど)と辛口の白(シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ヴェルシュリースリング、グリューナー・ヴェルトリーナー)を栽培。環境に対する意識が高く、土壌を健康に保つ為には労を厭わない。CO2排出量を抑えるためトラクターの使用を出来るだけ避けて、耕耘の回数を減らし、ブドウ畑に羊を放し飼いにして除草と除葉と堆肥を与え、ミツバチを養い、鳥の巣箱を設置し、野菜を育て、豚も飼い、農地全体の調和とバランスを考えて経営している。ノイジードラー湖に近い畑では甘口の貴腐ワイン用を、ルストの南西の珪岩、粘板岩、片麻岩、結晶片岩に粘土が混じる畑では辛口白用のブドウを、ルストの北の貝殻石灰質が多く含まれる畑では赤ワイン用品種を栽培。手作業で選び抜いた収穫を、バリック樽を多用して必要なだけ十分な時間をかけて醸造する。現在はエルンストの二人の息子達がワイン造りの伝統を継いでいる。
ブルゲンラントについて
ハンガリーと国境を接するノイジードラー湖の東側一帯は、かつてワイン生産地域ノイジードラーゼー・ヒューゲルラントと称していたが、2016年7月のワイン法改正で廃止された。それに代わり、同地域内で栽培された産地の個性を表現する規定の品種と規約に基づいて醸造されたワインをDAC(Distictus Austriae Controllatus)ライタベルクと称し、それ以外は単にブルゲンラントと称することになったが、旧ノイジードラーゼー・ヒューゲルラントの中心的都市ルストの生産者達には苦渋の選択だったことだろう。というのも、ルストには16世紀以来の貴腐ワインの伝統があり、自分達こそこの地域の代表という自負があるからだ。一方、1985年の不凍液混入事件で世界中の甘口ワインを危機的状況に陥れたのもルストの生産者だった。苦境からの脱出は1980年代後半、フレンチスタイルの国際品種で樽を効かせた濃厚な赤ワインの成功から始まったが、その担い手はノイジードラー湖を北西から囲むように延びるライタベルク山地の麓と、その西のアイゼンシュタットの生産者達だった。ライタベルクは粘板岩や片岩の上に石灰質が堆積した土壌から成る。その頂から冷気が吹き下ろし、南からはパンノニア平原の乾燥した熱風が吹き込み、湖は湿気と暖気を供給する。湖に近い畑は当然ながら貴腐ワイン用で、そこから離れながら標高が上がるとともに辛口白、赤ワイン用の品種が栽培されている。
オーストリアについて
オーストリアのワイン生産地域は国土の東側周縁部に分布し、緯度はブルゴーニュのコート・ドールからアルザスのオー・ランに相当する。ワイン生産地域は大きく三つに分けることが出来る。①北部のアルプスの森林に囲まれドナウ川が横断するニーダーエスタライヒ。②パンノニア平原に接して大陸性気候の影響を強く受けるブルゲンラント。③スロヴェニアの山地と同様に起伏に富んだ地形で、地中海からの暖気とアルプスの冷気がぶつかるシュタイヤーマルク。いずれも暖気と寒気がぶつかりやすい立地条件のため、近年は遅霜や雹で深刻な被害を受けることが増えている。この国は歴史的にはハプスブルク家が君臨したオーストリア・ハンガリー帝国の中心地であったことがワインとそれをとりまく文化を育んできた。1985年にノイジードラーゼーの生産者による不凍液混入事件で甘口ワイン市場が壊滅するという逆境が、かえってオーストリアを、伝統に縛られずに高品質を目指す好奇心旺盛で個性的なワイン生産国へと変えた。ビオロジックで栽培されるブドウ畑も約12%とヨーロッパで最も普及し、生産量は世界の1%にも満たないが、ビオディナミや亜硫酸無添加醸造、オレンジワインなどに積極的に取り組む生産者も少なくない。
Grüner Veltliner
グリューナー・ヴェルトリーナー
品種:グリューナー・ヴェルトリーナー
植樹:1995年頃
土壌:標高120m、石灰岩、石英、片麻石、粘板岩、粘土などから成る土壌
醸造:果梗についたまま破砕して圧搾。50%木樽、50%ステンレスタンクで野生酵母とともに醗酵。澱引きせずに半年から1年間熟成。
2021年産は甘口Lieblich(Alc. 14.4%, 残糖26.3g/L, 総酸度5.2g/L)。収穫後野生酵母で発酵、残糖26.3g/Lで自然に発酵が止まった。甘味はあきらかに感じられ、素直で親しみやすい味わい。
2016, 2017年産は halbtrocken(オフドライ), 2018年産は trocken(辛口)。
Blaufränkisch – Ried Gemärk
ブラウフレンキッシュ リート・ゲメルク
品種:ブラウフレンキッシュ100%
位置:湖にむかってなだらかに傾斜する畑。湖面に近く、背後に森がある。
土壌:石灰を含む粘土質土壌
醸造:野生酵母で発酵。容量300Lと500Lの木樽(一部新樽)で熟成。ノンフィルターで瓶詰め。
サワーチェリー、ジュニパーベリー(西洋ネズ)、スターアニスのアロマ。さわやかさと、しっかりした果実味を備えている、説得力のある味わい。
¥3850 (2020)
¥3960(2021)
Tridendron 2020
トリデンドロン
品種:メルロ主体、ブラウフレンキッシュ、カベルネ・ソーヴィニョン
植樹:2000年頃、1985年頃
土壌:レス土、石英、石灰岩などから成る土壌
醸造:除梗後容量8500Lのステンレスタンクで発酵。容量300Lの木樽で16ヵ月間熟成、新樽比率30%。瓶詰めの1ヵ月前にアサンブラージュ。
「トリ」Triは三つ、「デンドロン」Dendronはギリシア語で「木」の意味。ルスト村の司祭がこの名前の発案者だそう。メルロベースにブラウフレンキッシュとカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドした、三位一体の味わい。
¥4620
Rosé 2022
ロゼ
品種:ピノ・ノワール、ブラウフレンキッシュ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ
植樹:2000年頃
位置:南東向き
土壌:レス土、石灰岩土壌他
醸造:ダイレクトプレス。ステンレスタンクで野生酵母で発酵。発酵後、澱引きして、ステンレスタンクで約6ヵ月間熟成。
特に樹勢の強い畑の早摘みのブドウから造っている。甘みのある味わいだが、伸びやかな酸味がすっきりと洗い流す。
¥2750
Blaufränkisch – Ried Mariental 2018
ブラウフレンキッシュ リート・マリーエンタール
品種:ブラウフレンキッシュ100%
植樹:1975年頃、1945年頃
土壌:石灰質土壌
醸造:野生酵母で発酵。容量300Lの木樽(新樽70%)で22ヵ月間熟成。ノンフィルターで瓶詰め。
石灰質を含む痩せた土壌、特別なミクロクリマと樹齢のとても高い葡萄樹。1976年にトリーバウマー家が購入。1988年に1986年産のブラウフレンキッシュが世に出て注目を集めた。
¥11,000
Blaufraenkisch Rusterberg trocken NV
ブラウフレンキッシュ ルスターベルク トロッケン NV
品種:ブラウフレンキッシュ100%
植樹:1985年頃、2000年頃
位置:標高140~200m、南東向き
土壌:レス土、石英、片麻石などから成る土壌
醸造:ステンレスタンクで20日間マセレーション。容量1100~3000ℓの木樽(一部新樽)で約6カ月熟成。
最近までRusterberの畑名は、マジックで黒塗されていた。公的審査機関からの指摘で、ルスターベルクの畑名が集合畑(グロースラーゲ)として公認されていないので、使用しないように指導されため、畑名を黒マジックで塗りつぶして抗議の意思を表明していた。
2016年に集合畑名が公認され、黒塗りをやめた。
¥3190
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