Rita & Rudolf Trossen

リタ・ウント・ルドルフ・トロッセン

ドイツ / モーゼル

ドイツ国内よりも国外にファンの多い家族経営の生産者。15歳の頃から世界の行く末を案じていたルドルフは、答えを探し求める過程でルドルフ・シュタイナーの思想に出会う。1978年に23歳でリタと結婚した年に父が事故で亡くなり、醸造所を継ぐと同時にバイオダイナミクス農法を導入。ドイツ初のワイン生産者による全国規模の有機農法団体エコヴィンEcovinを1985年に設立するなど、ドイツワインの有機農法を実践する生産者の草分け的存在のひとり。醸造所とモーゼル川を挟んで対岸にあるキンハイム村の背後に広がる斜面に2.5haのブドウ畑を所有している。土壌は灰色と青色の粘板岩で、収穫は毎年世界各地から手伝いに来る人々と和気藹々と行う。醸造は伝統的なフーダー樽、ステンレスタンクと使い古したバリック樽を使い、野生酵母で発酵。2010年から亜硫酸無添加醸造の「プールスPurus」シリーズを造り始め、以前にも増してファンが増えつつあるが、二人の息子達は別の職業についていて醸造所を継ぐつもりはなく、ルドルフ氏もこれ以上規模を大きくするつもりはないという。「ブドウが育った場所の味がする自然なワイン」を目指している。

ミッテルモーゼルについて

ベルンカステラー・ドクトールやヴェーレナー・ゾンネンウーアなど、よく知られたブドウ畑が集中するミッテルモーゼルには青色と灰色の粘板岩土壌の急斜面が多い。あまりにも傾斜が急なため、伝統的な棒仕立てでしか栽培出来ない畑も少なくない。栽培は全て手作業で行わなければならないが、世界中探しても他にはない高貴な味わいのリースリングが出来る。所有面積3ha以下の小規模生産者が多い一方で、1990年代までは著名醸造所の有名な畑のワイン以外は手間に見合うだけの値段で売れず、耕作放棄された畑も多かった。しかし2000年頃から若者や異業種からの転職者がそうしたブドウ畑を入手し、素晴らしいワインを醸造して注目された。また、急斜面ではヘリコプターで農薬を散布するため、有機農法は他の生産者との衝突を招くことが多かったが、それでも一部に1970年代から信念を貫いて有機農法を行ってきた生産者もいる。近年はオレンジワインや亜硫酸無添加醸造に挑戦する生産者も登場して、閉鎖的で悲観的と揶揄されることのあった地域のメンタリティが変わりつつある。

モーゼルについて

モーゼル川はフランスのヴォージュ山脈に水源がある。ルクセンブルクを通過してドイツに入ると、それまで比較的まっすぐ流れていたのが蛇行をくりかえすようになり、やがてライン川に合流して旅路を終える。ドイツのブドウ畑はルクセンブルクとの国境から始まるが、ザール川との合流地点までの地区を「オーバーモーゼルObermosel」、そこからシュヴァルツカッツ(黒猫)で知られるツェルの手前までを「ミッテルモーゼルMittelmosel」、ツェルから河口までを「ウンターモーゼルUntermosel」と称するが、この下流域は極めて急な斜面に段々畑のようにブドウ畑があることから「テラッセンモーゼルTerassenmosel」(テラス状の畑があるモーゼル)とも称する。そしてザール川やルーヴァー川など、モーゼル川支流の渓谷にも優れたブドウ畑があることを忘れてはならない。この生産地域全体を特徴づけているのは、約4億年前のデヴォン紀に生成した粘板岩(英語:Slate、ドイツ語:Schiefer)土壌の急斜面のブドウ畑で栽培されるリースリングである。冷涼な気候による気品のある酸味と甘味のバランス、ブドウ畑や生産者により異なる様々な風味が魅力となっている。

ドイツについて

ヨーロッパの伝統的ワイン生産国の中でも最も北に位置し、冷涼な気候による酸味と甘味のイメージが支配的だった。近年は温暖化の恩恵を受けてフランス系品種も毎年完熟し、若手醸造家を担い手とした辛口ワインの高品質化がめざましい。ブドウ畑は旧東独の2生産地域を除いてフランス寄りの南西部に位置し、大半がライン川とその支流に広がっている。東部に位置する産地は大陸性気候の影響で夏は暑さと乾燥が、冬は寒さが厳しいが、南西部では海洋性気候の影響を受けて春から秋に雨が降るため、水はけの良い土壌や斜面が高品質なブドウ栽培の条件のひとつとなっている。主要な土壌は約4億年前に生成した粘板岩と、それから約2億年後に生成した雑色砂岩、貝殻石灰質、コイパーから成る三畳紀のトリアスである。前者は北西寄りのラインガウからアールにかけて分布し、リースリングとピノ・ノワール(=シュペートブルグンダー)に独特の個性を与えている。後者は南部のバーデンから東部のフランケンにかけて分布し、ピノ(=ブルグンダー)系の品種とジルヴァーナーやリースリングに優れたものが多い。

Schieferblume – Riesling trocken 2022
シーファーブルーメ リースリング・トロッケン

品種:リースリング
植樹:1984年頃(樹齢37~60年)
位置:川沿いの畑で森に囲まれている。
土壌:灰色と青色粘板岩・砂質粘土
補足:4つの畑のブレンド
醸造:手作業で収穫。全房圧搾。容量1000Lのステンレスタンクで野生酵母により4~6ヵ月間強制冷却せずにセラーの室温で発酵。軽くフィルターをかけて最小限の亜硫酸を添加。

シーファーブルーメは「粘板岩に咲く花」という意味。シーファー(粘板岩)土壌由来の味わいを存分に感じられるワインを目指した。地に足のついた、上質なモーゼルのリースリング辛口。
¥4510

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