月: 2025年12月

  • Mickael Bourg

    Mickael Bourg

    ミカエル・ブール

    フランス / ローヌ

    ワイナリーを初めて訪問させてもらったのが2021年の冬。出会った造り手は、肌が良く焼け、着飾らない農夫だった。代々続くブドウ農家の出身ではないが、2000年から2012年まで、コルナスのドメーヌ・デュ・クーレで働きつつ、自身の畑を少しずつ広げていった。初VTはコルナス2004、サン・ペレ2006。表土が薄く花崗岩が大半を占める畑をビオロジック栽培で管理しており、耕作は馬で行い更に急峻な斜面はウィンチによる耕作をしている。
    コルナスの村の中にある小さな教会の裏にある地上階のセラーは、広くはないが古い石造りのセラーで、壁も分厚い。赤白ともに、全房で醸造をしており、サン・ペレはたっぷりとした果実味と透明感のある酸が美しく、瑞々しささえ感じる。一方のコルナスは赤い果実味と、果皮の成分の黒さとスパイシーさが層になって感じられ、親しみやすさと複雑味の両方を備えた味わい。

    ローヌ北部について

    時に斜度60度にも達する、ローヌ河の狭い谷沿いに南北に広がる産地。主要品種はシラーとヴィオニエ。「熟成するとボルドーの卓越したワインに匹敵する、きわめて威厳あるワイン」とされ、高く評価されるコート・ロティ、エルミタージュ、コンドリュウなどを擁する。しかしその3つのAOCの栽培面積はいずれも非常に小さく、濃密・強壮さで知られるエルミタージュは約130ha(シャトー・ラフィットより少しだけ広い)ほど。コンドリュウは赤も生産するが、より高名なのはヴィオニエの白。域内に、わずか3.8haの極小AOCシャトー・グリエを内包する。近年は「高貴なエルミタージュの野性的な従兄弟」とも言われるコルナスにも注目が集まる。この地ではシラーの生産者はブルゴーニュほど石灰岩を追求せず、かわりに花崗岩を重視する。ヴァランスのすぐ南西に広がる丘陵地帯アルデッシュも、ブルゴーニュのルイ・ラトゥールなどのネゴシアンが大規模開発を行い、脚光を浴びている。

    ローヌについて

    リヨンのわずか35km南の街ヴィエンヌからアヴィニョンまで、南北約200kmにわたるローヌ河両岸に開く南仏の産地。エルミタージュ、コルナスなどを生む北部と、シャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダスなどを生む南部に分かれる。生産量の面では、ローヌ河沿いの狭い谷の急斜面に畑が続く北部は、比較的なだらかな丘陵が続く南部に対し、わずか1/10ほどである。最もベーシックなAOCであるコート・デュ・ローヌは、北部では50村、南部では113村がその名を許される。のべ4万haの畑から生まれるそのワインの生産量はボジョレの約3倍で、ボルドーの全生産量に次ぐ。そのうち白、及びロゼは、わずか4%以下にとどまる。赤ワインの主要品種はグルナッシュで、赤の総栽培の約40%を占める。この地にブドウ栽培をもたらしたのは、紀元前4世紀頃にマルセイユの港を築いた古代ギリシャ人。その後、紀元前125年ごろ入植したローマ人が、ワイン生産を飛躍的に発展させたと言われる。

    Saint Peray
    サン・ペレ


    品種:マルサンヌ100%
    植樹:1950~1990年代
    位置:標高200m
    土壌:花崗岩
    醸造:全房でプレス後、樽で醗酵を始める。18ヵ月間樽熟成。2021VTのように霜の被害があったりした年はステンレスタンクで醗酵を進める事もある。醗酵終了後も澱引きをせず、そのままシュールリー熟成を続ける。

    合わせて0.65haの2つの畑のブドウを使用。南の白らしい成熟した甘みをすっきりとした酸が支え、味わいのノリもしっかりしているが、開けたては果実味の透明感が印象的。

    ¥7370 (2022)

    Cornas – Les p’tits Bouts
    コルナス レ・プティ・ブー


    品種:シラー100%
    植樹:1950~2013年
    位置:南~南西向き
    土壌:花崗岩
    醸造:シラーは区画ごとにマセレーション(2~3週間)と醗酵を行う。醗酵の始めはルモンタージュを行い醗酵がある程度進んだところ(糖度比重が1060程度)から、一日一回のピジャージュを行う。その後600Lの樽で、18ヵ月間熟成。

    樹齢の様々な合計1.8haの4つの畑のブドウを使用。軽やかな赤い果実のチャーミングな要素と熟したシラーの、スパイシーな要素がバランスよくまとまっている。

    ¥9900 (2022)

  • La Vigna di San Martino ad Argiano

    La Vigna di San Martino ad Argiano

    ラ・ヴィーニャ・ディ・サン・マルティーノ・アダルジャー

    イタリア / トスカーナ

    ラ・ヴィーニャ・ディ・サン・マルティーノ・アダルジャーノは、農学者アンドレア・トッカチェーリと醸造家ジャンパオロ・キエッティーニが手がける小規模ワイナリーだ。2012年、キャンティ・クラッシコ北部サン・カッシアーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザのアルジャーノ地区に1haの畑を取得し、バイオロジック農法による栽培を開始した。ジャンパオロは1985年からワイン造りに携わり、かつてイーゾレ・エ・オレーナでパオロ・デ・マルキ氏のもと、10年間を過ごした経験を持つベテランである。現在もトスカーナの複数の生産者へのコンサルタント業と並行して、自身のワイン造りも続けている。赤ワインはキャンティ・クラッシコ・リゼルヴァのみを生産。白ワイン「イミグラント・ワイン」には、あえて非土着品種のミュラー・トゥルガウを用いるなど、時流に流されない独自の姿勢が光る。教会跡地に隣接する畑への敬意から、ワイナリーの名とかつて教会に飾られていた絵画をラベルに冠しており、この土地と人々への深い思いがそこに込められている。

    キアンティについて

    15世紀以来「キアンティ」という地名は北はフィレンツェから南はシエナまでの広大な地域を指す。標高800mまでの丘陵があるが、ワイン造りは250~500m前後の高度が中心。最初にキアンティの境界を定めたのは、1716年トスカーナ大公・コジモ3世。1932年に、広がり続けるキアンティの呼称に対抗し、9村・計7万haが“伝統的”区域としてクラッシコの呼称を得、その際の境界は現在も不動。キアンティ・クラッシコは長らく白ブドウのブレンドが必須だったが、サンジョヴェーゼ100%の認可は1996年以降。2000年には国際品種のブレンド率を20%まで引き上げた(DOCG初年の1984年は10%)。現在、生産者は約350社。この「キアンティ・クラッシコ」の周辺に広がる形でDOCGキアンティとして、ルフィナ、コッリ・セネージなど7つの地域が認定されている。この地域でも生産者の力量しだいで、高名なクラッシコに勝るとも劣らないワインも生まれている。

    トスカーナについて

    サンジョヴェーゼ品種の最重要生産地であり、その王国。20世紀末の短期間、主に伝統産地外の沿岸部などで、ボルドー品種とバリック新樽を用いた濃厚なワインが“スーパー・タスカン”と称され、世界を席巻したが、近年はよりピュアにサンジョヴェーゼの美点を追求する生産者に再び注目が集まっている。ただし区分したいのは“スーパー・タスカン”の中でもかつては主にキアンティ・クラッシコDOCG法外だった100%サンジョヴェーゼを敢行したゆえのワインたち。それらの生産者の中には、サンジョヴェーゼ100%がDOCG法認可された後も、IGTにとどまり偉大な深みを持つワインを生み続ける生産者が少なくなく、同じ“スーパー・タスカン”の中でもボルドー品種主体のものとは区別して把握・評価するべきだろう。また、この州の人々は歴史的に進取の気性に富み、常に探求と挑戦と共にワイン造りも変化する。その様子を、ヒュー・ジョンソンは「旧世界の中の新世界」とさえ評している。

    IGT Bianco Toscana – Immigrant Wine
    ビアンコ・トスカーナ イミグラント・ワイン

    品種:ミュラー=トゥルガウ100%
    植樹:1970年代
    位置:標高370m
    土壌:石灰岩を含む粘土質ローム
    醸造:ステンレスタンクで醗酵。ステンレスタンクで半年間熟成。

    土着品種もいわば流行に過ぎないのではという独自の視点からミュラー=トゥルガウを白ワイン用ブドウに選んだ。トレンティーノからキアンティ・ルフィナのエリアに移住した農家が1970年代に植えた畑のブドウを使用し、新しい品種を植えるという挑戦的で自由な発想に敬意を表し「イミグラント:移民」と名付けた。芳醇な香りに対して余韻は、締まりのある辛口。
    ¥4840 (2022)

    Chianti Classico Riserva
    キアンティ・クラッシコ・リゼルヴァ

    品種:サンジョヴェーゼ100%
    植樹:2013年
    位置:標高300m
    土壌:礫、砂利を含む粘土石灰質
    醸造:ステンレスタンクで1か月マセレーション。500Lと1000Lの新樽を含む木製樽で18か月熟成。

    樹齢の若いブドウ樹のワインではあるが、スキのないバランス感覚は、長年の経験と技術を感じさせる仕上がり。瓶内熟成期間や抜栓してからの時間をやや要するワイン。
    ¥7260 (2022)