投稿者: amala

  • Ernst Triebaumer

    Ernst Triebaumer

    エルンスト・トリーバウマー

    オーストリア / ブルゲンラント

    トリーバウマー家の初代はルター派の宗教難民として1691年にルストに移住し、代々農業を営んできた。世間に知られるようになったきっかけは1988年、雑誌ヴィナリアVinariaが世界の赤ワインをテーマにした品評会で、エルンスト・トリーバウマーの父が1960年代に植樹し、エルンストが醸造した1986年産ブラウフレンキッシュ「リート・マリエンタール」の優勝だった。このワインは現在もオーストリアでは伝説のワインとして語り継がれている。ルスト周辺は本来貴腐ワインのルスター・アウスブルッフの名産地として知られているが、トリーバウマーは約20haのブドウ畑のうち75%を赤ワイン用品種(50%ブラウフレンキッシュ、残りはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロなど)と辛口の白(シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ヴェルシュリースリング、グリューナー・ヴェルトリーナー)を栽培。環境に対する意識が高く、土壌を健康に保つ為には労を厭わない。CO2排出量を抑えるためトラクターの使用を出来るだけ避けて、耕耘の回数を減らし、ブドウ畑に羊を放し飼いにして除草と除葉と堆肥を与え、ミツバチを養い、鳥の巣箱を設置し、野菜を育て、豚も飼い、農地全体の調和とバランスを考えて経営している。ノイジードラー湖に近い畑では甘口の貴腐ワイン用を、ルストの南西の珪岩、粘板岩、片麻岩、結晶片岩に粘土が混じる畑では辛口白用のブドウを、ルストの北の貝殻石灰質が多く含まれる畑では赤ワイン用品種を栽培。手作業で選び抜いた収穫を、バリック樽を多用して必要なだけ十分な時間をかけて醸造する。現在はエルンストの二人の息子達がワイン造りの伝統を継いでいる。

    ブルゲンラントについて

    ハンガリーと国境を接するノイジードラー湖の東側一帯は、かつてワイン生産地域ノイジードラーゼー・ヒューゲルラントと称していたが、2016年7月のワイン法改正で廃止された。それに代わり、同地域内で栽培された産地の個性を表現する規定の品種と規約に基づいて醸造されたワインをDAC(Distictus Austriae Controllatus)ライタベルクと称し、それ以外は単にブルゲンラントと称することになったが、旧ノイジードラーゼー・ヒューゲルラントの中心的都市ルストの生産者達には苦渋の選択だったことだろう。というのも、ルストには16世紀以来の貴腐ワインの伝統があり、自分達こそこの地域の代表という自負があるからだ。一方、1985年の不凍液混入事件で世界中の甘口ワインを危機的状況に陥れたのもルストの生産者だった。苦境からの脱出は1980年代後半、フレンチスタイルの国際品種で樽を効かせた濃厚な赤ワインの成功から始まったが、その担い手はノイジードラー湖を北西から囲むように延びるライタベルク山地の麓と、その西のアイゼンシュタットの生産者達だった。ライタベルクは粘板岩や片岩の上に石灰質が堆積した土壌から成る。その頂から冷気が吹き下ろし、南からはパンノニア平原の乾燥した熱風が吹き込み、湖は湿気と暖気を供給する。湖に近い畑は当然ながら貴腐ワイン用で、そこから離れながら標高が上がるとともに辛口白、赤ワイン用の品種が栽培されている。

    オーストリアについて

    オーストリアのワイン生産地域は国土の東側周縁部に分布し、緯度はブルゴーニュのコート・ドールからアルザスのオー・ランに相当する。ワイン生産地域は大きく三つに分けることが出来る。①北部のアルプスの森林に囲まれドナウ川が横断するニーダーエスタライヒ。②パンノニア平原に接して大陸性気候の影響を強く受けるブルゲンラント。③スロヴェニアの山地と同様に起伏に富んだ地形で、地中海からの暖気とアルプスの冷気がぶつかるシュタイヤーマルク。いずれも暖気と寒気がぶつかりやすい立地条件のため、近年は遅霜や雹で深刻な被害を受けることが増えている。この国は歴史的にはハプスブルク家が君臨したオーストリア・ハンガリー帝国の中心地であったことがワインとそれをとりまく文化を育んできた。1985年にノイジードラーゼーの生産者による不凍液混入事件で甘口ワイン市場が壊滅するという逆境が、かえってオーストリアを、伝統に縛られずに高品質を目指す好奇心旺盛で個性的なワイン生産国へと変えた。ビオロジックで栽培されるブドウ畑も約12%とヨーロッパで最も普及し、生産量は世界の1%にも満たないが、ビオディナミや亜硫酸無添加醸造、オレンジワインなどに積極的に取り組む生産者も少なくない。

    Grüner Veltliner
    グリューナー・ヴェルトリーナー

    品種:グリューナー・ヴェルトリーナー
    植樹:1995年頃
    土壌:標高120m、石灰岩、石英、片麻石、粘板岩、粘土などから成る土壌
    醸造:果梗についたまま破砕して圧搾。50%木樽、50%ステンレスタンクで野生酵母とともに醗酵。澱引きせずに半年から1年間熟成。

    2021年産は甘口Lieblich(Alc. 14.4%, 残糖26.3g/L, 総酸度5.2g/L)。収穫後野生酵母で発酵、残糖26.3g/Lで自然に発酵が止まった。甘味はあきらかに感じられ、素直で親しみやすい味わい。
    2016, 2017年産は halbtrocken(オフドライ), 2018年産は trocken(辛口)。

    Blaufränkisch – Ried Gemärk
    ブラウフレンキッシュ リート・ゲメルク

    品種:ブラウフレンキッシュ100%
    位置:湖にむかってなだらかに傾斜する畑。湖面に近く、背後に森がある。
    土壌:石灰を含む粘土質土壌
    醸造:野生酵母で発酵。容量300Lと500Lの木樽(一部新樽)で熟成。ノンフィルターで瓶詰め。

    サワーチェリー、ジュニパーベリー(西洋ネズ)、スターアニスのアロマ。さわやかさと、しっかりした果実味を備えている、説得力のある味わい。
    ¥3850 (2020)
    ¥3960(2021)

    Tridendron 2020
    トリデンドロン

    品種:メルロ主体、ブラウフレンキッシュ、カベルネ・ソーヴィニョン
    植樹:2000年頃、1985年頃
    土壌:レス土、石英、石灰岩などから成る土壌
    醸造:除梗後容量8500Lのステンレスタンクで発酵。容量300Lの木樽で16ヵ月間熟成、新樽比率30%。瓶詰めの1ヵ月前にアサンブラージュ。

    「トリ」Triは三つ、「デンドロン」Dendronはギリシア語で「木」の意味。ルスト村の司祭がこの名前の発案者だそう。メルロベースにブラウフレンキッシュとカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドした、三位一体の味わい。
    ¥4620

    Rosé 2022
    ロゼ

    品種:ピノ・ノワール、ブラウフレンキッシュ、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ
    植樹:2000年頃
    位置:南東向き
    土壌:レス土、石灰岩土壌他
    醸造:ダイレクトプレス。ステンレスタンクで野生酵母で発酵。発酵後、澱引きして、ステンレスタンクで約6ヵ月間熟成。

    特に樹勢の強い畑の早摘みのブドウから造っている。甘みのある味わいだが、伸びやかな酸味がすっきりと洗い流す。
    ¥2750

    Blaufränkisch – Ried Mariental 2018
    ブラウフレンキッシュ リート・マリーエンタール

    品種:ブラウフレンキッシュ100%
    植樹:1975年頃、1945年頃
    土壌:石灰質土壌
    醸造:野生酵母で発酵。容量300Lの木樽(新樽70%)で22ヵ月間熟成。ノンフィルターで瓶詰め。

    石灰質を含む痩せた土壌、特別なミクロクリマと樹齢のとても高い葡萄樹。1976年にトリーバウマー家が購入。1988年に1986年産のブラウフレンキッシュが世に出て注目を集めた。
    ¥11,000

    Blaufraenkisch Rusterberg trocken NV
    ブラウフレンキッシュ ルスターベルク トロッケン NV

    品種:ブラウフレンキッシュ100%
    植樹:1985年頃、2000年頃  
    位置:標高140~200m、南東向き
    土壌:レス土、石英、片麻石などから成る土壌
    醸造:ステンレスタンクで20日間マセレーション。容量1100~3000ℓの木樽(一部新樽)で約6カ月熟成。

    最近までRusterberの畑名は、マジックで黒塗されていた。公的審査機関からの指摘で、ルスターベルクの畑名が集合畑(グロースラーゲ)として公認されていないので、使用しないように指導されため、畑名を黒マジックで塗りつぶして抗議の意思を表明していた。
    2016年に集合畑名が公認され、黒塗りをやめた。
    ¥3190

  • Weingut Soellner

    Weingut Soellner

    ヴァイングート・スールナー

    オーストリア / ヴァーグラム

    生産地域ヴァグラムの北西部で、隣接する生産地域カンプタールを縦断するマンハーツ山脈の南端に位置するゲーシングGösing村にある。ドナウ川に向かって開けた高台に位置し、スールナーが所有する16haのブドウ畑は、標高250~350mの南向きの河岸段丘にあって見晴らしが良い。オーナー醸造家のトーニ・スールナーは、16歳の時に初めてブドウを圧搾した。スールナー家はワイン造りだけでなく、1haの果樹園でリンゴや梨を、16haの農地で様々な穀物を栽培し、豚、羊なども飼育する複合農家で、森林も約5ha所有している。トーニは1995年にダニエラ・ヴィーニュさんとの結婚を機にビオロジックへの転換を決意。1997年にはそれを完了し、2004年にはビオディナミへと移行した。「自然と共に働いて生きる」ことをモットーに、「魂と個性とエネルギーがこもった、飲んで美味しく体に良いワイン」を目指している。ビオディナミで活性化した土壌にはマンハーツ山脈の花崗岩が混じり、砂、砂利、それにレス土が厚く堆積。昼にはパンノニア気候の乾いた熱風が吹き、夜は山から冷気が降りてブドウの成熟とアロマの蓄積を助ける。品種の大半はグリューナー・ヴェルトリーナーで、他にリースリング、ツヴァイゲルト、ザンクト・ラウレント、カベルネを栽培し、ステンレスタンク、大樽、小樽で野生酵母で発酵する。中でもヴァグラムが発祥の地と言われているローター・ヴェルトリーナーを、1930年代に作られた炻器(ストーンウェア)のタンクで醸し発酵した「イルデン」irdenは、トーニとダニエラの好奇心と志を象徴している。

    ヴァーグラムについて

    クレムスタールからウィーンまでドナウ川の両岸広がる生産地域だが、大半のブドウ畑と主な生産者は西隣のカンプタール寄りの高台に集中している。かつてはドナウタールという名の生産地域だったが2007年にヴァグラムに改名。それ以来若手生産者が注目されるなど、イメージアップに成功している。ちなみにヴァグラムは中世高地ドイツ語の”wac”(水の流れ、川)と”rain”(耕地の境界、草原、斜面)を意味し、恐らくドナウ川沿いの斜面に由来する。その名の通り北から南のドナウ川に向かってひらけたレス土の緩斜面に、階段状に畑が造成されている。北側の山から冷気が、ドナウ川から暖気が吹き込んでブドウの成熟とアロマの蓄積を助けるのはヴァッハウ、クレムスタールと同じだが、地形が開けていて常に風が吹いているので黴が繁殖しにくく、ビオロジックに向いている。また石灰質成分を多く含むレス土は、ミネラル分に富んで保水力に優れ渇水に強い。産地を代表する品種はグリューナー・ヴェルトリーナーで栽培面積の48.9%(2015年)、次いでツヴァイゲルトが13.7%を占める。

    オーストリアについて

    オーストリアのワイン生産地域は国土の東側周縁部に分布し、緯度はブルゴーニュのコート・ドールからアルザスのオー・ランに相当する。ワイン生産地域は大きく三つに分けることが出来る。①北部のアルプスの森林に囲まれドナウ川が横断するニーダーエスタライヒ。②パンノニア平原に接して大陸性気候の影響を強く受けるブルゲンラント。③スロヴェニアの山地と同様に起伏に富んだ地形で、地中海からの暖気とアルプスの冷気がぶつかるシュタイヤーマルク。いずれも暖気と寒気がぶつかりやすい立地条件のため、近年は遅霜や雹で深刻な被害を受けることが増えている。この国は歴史的にはハプスブルク家が君臨したオーストリア・ハンガリー帝国の中心地であったことがワインとそれをとりまく文化を育んできた。1985年にノイジードラーゼーの生産者による不凍液混入事件で甘口ワイン市場が壊滅するという逆境が、かえってオーストリアを、伝統に縛られずに高品質を目指す好奇心旺盛で個性的なワイン生産国へと変えた。ビオロジックで栽培されるブドウ畑も約12%とヨーロッパで最も普及し、生産量は世界の1%にも満たないが、ビオディナミや亜硫酸無添加醸造、オレンジワインなどに積極的に取り組む生産者も少なくない。

    TONI – Grüner Veltliner
    トーニ グリューナー・ヴェルトリーナー

    品種:グリューナー・ヴェルトリーナー
    植樹:1995年頃
    位置:標高290~320m。南・東・西向き
    土壌:石灰分の多い砂質レス土壌
    醸造:ステンレスタンクで野生酵母により醗酵。ステンレスタンクで5ヵ月間熟成
    トーニTONIは現当主のファーストネームであり、T:tasty(おいしい)、O: original(独自の)、 N:natural(自然の)、I:individual(個性的な)、の4つ単語にもかけられたネーミング。フレッシュでみずみずしく、軽やかでバランスの取れたグリューナー・ヴェルトリーナー。
    ¥3520 (2024)

    DANI – Rose 2022
    ダーニ ロゼ

    品種:ブラウアー・ツヴァイゲルト、メルロ、カベルネ・ソーヴニョン
    植樹:1990年頃
    位置:標高290~320m、南・東・西向き
    土壌:砂質及び粘土質レス土壌
    醸造:ステンレスタンクでゆっくりと野生酵母により発酵、ステンレスタンクで熟成。
    ダーニDANIは造り手Toniの妻ダニエラの愛称であり、D: delicious(おいしい)、A: animated(活き活きとした)、N:natural(自然の)、I:individual(個性的な)、の4つ意味にもかけられたネーミング。軽やかでフレッシュ、イチゴやラズベリーの香る、飲み心地の良い夏向きワイン。
    ¥2860

    Ried Hengstberg – Grüner Veltliner 2022
    リート・ヘングストベルク グリューナー・ヴェルトリーナー

    品種:グリューナー・ヴェルトリーナー
    植樹:2003, 2009年
    位置:標高371mのヘングストベルクの斜面上方、南向き
    土壌:貝殻石灰質
    醸造:健全に完熟したブドウを慎重に圧搾、ステンレスタンクで野生酵母により発
    酵。澱の上で約2ヵ月熟成後、収穫翌年1月に珪藻土のフィルターにかけるその後ステンレスタンクで瓶詰めまで熟成

    ヴァグラムで最も標高の高いヘングストベルクの山の南向き斜面の畑。繊細でエキゾチックな香りが飲み手を誘い、華やかで調和のとれたおだやかな果実味が特徴。品のある味わい。
    ¥3740

  • Weingut Veyder-Malberg

    Weingut Veyder-Malberg

    ヴァイダー・マルベルク

    オーストリア / ヴァッハウ

    オーナー醸造家のペーター・マルベルクは異色の経歴を持つ。青年時代はリトグラフ印刷技術を学んだあとビジネススクール卒業し、ウィーンの広告代理店で営業部長を務めていたが、その頃の交流関係でワインへの情熱に目覚めた。1991年に会社を辞めて2年間ナパヴァレーとスイスで醸造学校に通い、1993年にはヴァインフィアテルのグラーフ・ハーデック醸造所に就職しているが、その間にもナパヴァレー、トスカーナ、スイス、ドイツ、ニュージーランドと世界各地のワイナリーで研修した。やがて2008年にフリーランスのブドウ栽培・マーケティングコンサルタントとして独立してヴァイダー=マルベルク醸造所を設立することになるが、それまでの14年間グラーフ・ハーデック醸造所の経営責任者として辣腕をふるい、オーストリアでは前例のないヴィオニエやシラーで見事なワインを醸造して注目を集めた。一方、ヴァッハウでは伝統にとことんこだわっている。機械の入れない急斜面の石垣に囲まれたブドウ畑に育つグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングの古木を、ビオディナミ農法を採り入れて栽培。ボトリティスの繁殖していない状態で完熟した房を手作業で収穫し、伝統的な大樽で野生酵母で発酵しテロワールの個性を最大限に引き出している。設立当時は元肉屋の地下室を改装して醸造していたが、2014年に急斜面を利用して重力で果汁を移動出来るセラーを新築。5.5haのブドウ畑から妥協というものを全く感じさせない高品質なワインを醸造している。

    ヴァッハウについて

    蛇行するドナウ川沿いの急斜面にブドウ畑の広がる、オーストリア最古の伝統的ワイン生産地域。その景観はUNESCOの世界文化遺産に指定されている。ブドウ畑の所有者が維持管理しなければならない擁壁に支えられたテラス状の急斜面が広がり、ブドウの畝は川の流れと平行に曲線を描いて幾重にも連なっている。東に行くほどパンノニア平原からの熱気の影響を受けるため収穫時期は早まり、糖度は上がりやすい。一方斜面上部は背後の森からの冷気の影響で、ブドウはゆっくりと成熟する。ヴァッハウの土壌は原成岩-生成年代の古い花崗岩や片麻岩などの総称-で知られるが、これは主に斜面中腹から上部に見られ、斜面下部には柔らかいレス土が堆積している。栽培品種も斜面にはリースリング(栽培面積の17.4%、2015年)、麓の平坦な土地にはグリューナー・ヴェルトリーナー(56.9%)と、使い分けられている。生産者団体ヴィネア・ヴァッハウが1980年代からワインのスタイルによって三段階に分かれた格付け(繊細→複雑:シュタインフェーダー→フェーダーシュピール→スマラークト)を行っていて、その他の生産地域とは一線を画した独自路線を歩んでいたが、2020年5月にDAC(オーストリア原産地呼称制度)に加わった。とはいえ、シュタインフェーダー、フェーダーシュピール、スマラークトの呼称はDACの中で存続することとなった。

    オーストリアについて

    オーストリアのワイン生産地域は国土の東側周縁部に分布し、緯度はブルゴーニュのコート・ドールからアルザスのオー・ランに相当する。ワイン生産地域は大きく三つに分けることが出来る。①北部のアルプスの森林に囲まれドナウ川が横断するニーダーエスタライヒ。②パンノニア平原に接して大陸性気候の影響を強く受けるブルゲンラント。③スロヴェニアの山地と同様に起伏に富んだ地形で、地中海からの暖気とアルプスの冷気がぶつかるシュタイヤーマルク。いずれも暖気と寒気がぶつかりやすい立地条件のため、近年は遅霜や雹で深刻な被害を受けることが増えている。この国は歴史的にはハプスブルク家が君臨したオーストリア・ハンガリー帝国の中心地であったことがワインとそれをとりまく文化を育んできた。1985年にノイジードラーゼーの生産者による不凍液混入事件で甘口ワイン市場が壊滅するという逆境が、かえってオーストリアを、伝統に縛られずに高品質を目指す好奇心旺盛で個性的なワイン生産国へと変えた。ビオロジックで栽培されるブドウ畑も約12%とヨーロッパで最も普及し、生産量は世界の1%にも満たないが、ビオディナミや亜硫酸無添加醸造、オレンジワインなどに積極的に取り組む生産者も少なくない。

    Wachauer LIEBEDICH Grüner Veltliner 2022
    ヴァッハウアー・リーベディッヒ・グリューナー・ヴェルトリーナー

    品種:グリューナー・ヴェルトリーナー
    植樹:1980年頃、古木もあり
    位置:標高250~350m、南向き
    土壌:小片のシスト、片麻岩
    醸造:ステンレスタンクで醗酵。ステンレスタンクで約5ヵ月間熟成。

    ヴァッハウの複数の畑のブドウのブレンド。それぞれの畑が、最高の品質のワインになるポテンシャルはあるが、畑が小さいためブレンドにしている。畑の大部分は原生岩土壌。その中のレス土壌のブドウ畑にはトラクターで耕作しており、ボトルの首に「手仕事Handarbeit」と書いてある帯をつけていない。ちなみに「リーベディッヒ」は英語で”love You”。
    ¥5830

  • Rinklin

    Rinklin

    リンクリン

    ドイツ / バーデン

    カイザーシュトゥール東部のアイヒシュテッテンにある、ブドウ畑面積7haの家族経営の醸造所。創業者のヴィルヘルム・リンクリンはバーデン地方のビオロジックの草分け的存在で、1955年、ワインだけでなく様々な農産物を造っていた複合農家だった時にビオロジックに転換し、1971年にビオロジックの農産物生産者団体ビオラントを12人の仲間達とともに創設。そして1975年にはビオロジック農産物の専門商社「リンクリン・ナトゥアコスト」社を設立。現在約250人の従業員が働いている。醸造所はヴィルヘルムの孫の一人フリードヘルムが運営し、奥さんのアンネさんは醸造所が経営する民宿を切り盛りしている。栽培品種はミュラー・トゥルガウ、シュペートブルグンダー、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー、ムスカテラー、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、レゲントなど。収量は40~70hℓ/haで、白は全房圧搾で澄んだ果汁を得て、ステンレスタンクで大半はシャプタリゼーションをせず野生酵母により発酵する。赤はライン地方に伝統的な楕円形をしたシュトゥック樽かバリック樽で熟成する。年間生産量は約5万本、うち10~15%が日本に輸出される。

    カイザーシュトゥールについて

    ドイツのフライブルクとアルザスのコルマールの間に広がる、ライン川沿いの平野に孤立して聳えている、約1600~1900万年前の火山の噴火により出来た標高556mの山岳地帯。ドイツで最も温暖な場所で、ここにしか生息しないトカゲの一種や様々な蘭が生息している。最上のブドウ畑は南西部の火山性土壌が露出した一帯に集中しているが、その他の部分は氷河期に飛来した石灰質を含むレス土が10~40mの厚さに堆積している。1970年代から80年代にかけて、レス土壌の斜面を切り崩して、トラクターで作業可能な段々畑にする大規模な造成が行われたが、後に湿気や冷気が停滞しやすくなることがわかり、現在ではもとの斜面の地形に戻された畑もある。シュペートブルグンダーとミュラー・トゥルガウ、グラウブルグンダーが主に栽培されているが、対岸のアルザスの影響を受けて1970年代頃から食事にあうワインを目指す生産者が登場したり、1980年代半ばにはドイツで最初にブルゴーニュを見習いバリックを使ったシュペートブルグンダーが醸造されたりと、フランスワインから学んで来た。現在もドイツを代表するブルグンダー系品種の産地のひとつである。

    バーデンについて

    ドイツで三番目に広い生産地域で、9つのベライヒ(地区)に分かれているが、主要な7つのベライヒはライン川に沿って南北約300kmにわたり細長く伸びている。生産地域ファルツとライン川を挟んで対岸に位置するバーディッシェ・ベルクシュトラーセとクライヒガウ、その南のオルテナウを北バーデンとし、アルザスのオー・ラン県の対岸に位置するブライスガウ、カイザーシュトゥール、トゥニベルク、マルクグレーフラーラントを南バーデンと、大きく二つに分けることが出来る。北バーデンではリースリングとシュペートブルグンダーが盛んに栽培され、土壌もファルツやフランケンと同じ三畳紀の地層が広く分布し、その上にレス土が堆積している。一方南バーデンではシュペートブルグンダーやグラウブルグンダーなどピノ系品種の栽培が盛んで、土壌はジュラ紀の石灰質や火山性土壌の上にレス土が厚く堆積している。ライン地溝帯に沿ってブルゴーニュからの暖気が流れ込み、背後のオーデンヴァルト、シュヴァルツヴァルトの冷気とぶつかるので年間降水量がやや多い(約760~1000mm)。EUのブドウ栽培気候区分では、バーデンはドイツの中で唯一アルザス、ジュラ、サヴォワ、ロワール、シャンパーニュなどと同じB地帯に属する。

    ドイツについて

    ヨーロッパの伝統的ワイン生産国の中でも最も北に位置し、冷涼な気候による酸味と甘味のイメージが支配的だった。近年は温暖化の恩恵を受けてフランス系品種も毎年完熟し、若手醸造家を担い手とした辛口ワインの高品質化がめざましい。ブドウ畑は旧東独の2生産地域を除いてフランス寄りの南西部に位置し、大半がライン川とその支流に広がっている。東部に位置する産地は大陸性気候の影響で夏は暑さと乾燥が、冬は寒さが厳しいが、南西部では海洋性気候の影響を受けて春から秋に雨が降るため、水はけの良い土壌や斜面が高品質なブドウ栽培の条件のひとつとなっている。主要な土壌は約4億年前に生成した粘板岩と、それから約2億年後に生成した雑色砂岩、貝殻石灰質、コイパーから成る三畳紀のトリアスである。前者は北西寄りのラインガウからアールにかけて分布し、リースリングとピノ・ノワール(=シュペートブルグンダー)に独特の個性を与えている。後者は南部のバーデンから東部のフランケンにかけて分布し、ピノ(=ブルグンダー)系の品種とジルヴァーナーやリースリングに優れたものが多い。

    Müller-Thurgau trocken 2023
    ミュラー=トゥルガウ・トロッケン

    品種:ミュラー・トゥルガウ
    植樹:2006年頃
    位置:標高210m、東向き
    土壌:粘土質
    醸造:畑全房圧搾ステンレスタンクで野生酵母により発酵ステンレスタンクで5ヵ月間熟成

    アイヒシュテッテンにあるすべての畑はヘレンバックと名付けられている。その中のヴァッベンベルク(Wabbenberg)と呼ばれる区画で収穫されたブドウを用いて醸造している。
    ¥2860

    Spätburgunder trocken 2022
    シュペートブルグンダー・トロッケン

    品種:シュペートブルグンダー
    植樹:1987年頃
    位置:東~西向き
    土壌:粘土質
    醸造:ステンレスタンクで8日間マセレーション。ステンレスタンクとオーク樽(大型の楕円形をしたシュトゥック樽とバリック樽)で10ヵ月間熟成。

    ヘレンバックの畑にあるリンクリン所有の複数の区画から収穫されたブドウを使用。2018年産からノンフィルターで瓶詰めするようになり、味わいが一層向上した。
    ¥3080

  • Odinstal

    Odinstal

    オーディンスタール

    ドイツ / ファルツ

    19世紀初めに建てられた館と森、牧草地とブドウ畑合計約20haの地所を、1998年に現オーナーのトーマス・ヘンゼルが購入。2004年に醸造責任者兼経営責任者として、当時弱冠26歳でガイゼンハイム大学を卒業したばかりのアンドレアス・シューマンを抜擢。1990年代から前オーナーがビオロジックで栽培していたブドウ畑を、2006年にバイオダイナミクス農法に転換し、2008年にデメターの認証を取得した。堆肥もプレパラートも自分で作っている。ファルツで最も標高の高い海抜350mの山の上の斜面にある約5haのブドウ畑は、雑色砂岩、貝殻石灰質、コイパーと玄武岩の区画に分かれている。栽培品種はリースリング、ヴァイスブルグンダー、オーセロワ、ジルヴァーナー、ゲヴュルツトラミーナーで、2008年からリースリング、2011年からジルヴァーナーの一部の区画で無剪定栽培を行っている。収量は約30hℓ/ha。標高が高く冷涼な気候なので収穫はファルツの他の畑よりも約2週間遅い。醸造はステンレスタンクとバリック樽を使い、野生酵母で発酵。白ワイン用品種のマセレーション発酵や亜硫酸無添加醸造、少量だがアンフォラ(容量180ℓのスペイン製ティナハ2基、2012年産から)を使った醸造も行うなど、新しい醸造法を積極的に採り入れて、他にはない高品質で個性的なワインを醸造している。

    ミッテルハールト

    ファルツの銘醸といえば、1990年代まではミッテルハールト南部の山裾のワイン街道沿いに並ぶ9つの町(南からハールト、ムスバッハ、ギンメルディゲン、ケーニヒスバッハ、ルッパーツベルク、ダイデスハイム、フォルスト、ヴァッヘンハイム)にある醸造所とブドウ畑を指した。この地区のブドウ畑の標高は高いところでも海抜220mで、なだらかな斜面に広がるブドウ畑がライン川にむかって続く景色はブルゴーニュにやや似ている。集落の中のひときわ立派な邸宅が、ファルツの3B(バッサーマン・ヨーダン、ビュルクリン・ヴォルフ、フォン・ブール)をはじめとする著名醸造所だが、彼らは優れたブドウ畑を所有し、リースリングを辛口に仕立てることを得意とし、VDPプレディカーツヴァイン生産者連盟のブドウ畑の格付けを1990年代半ばから推進してきた。かつてヨーダン家の所有だった3つの著名生産者を、広告業で財をなしたアキム・ニーダーベルガーが2002年から2005年にかけて買収し、設備と人材に投資したことで一層品質の向上を果たした。優れた生産者はビオディナミやオレンジワインに取り組むなど、伝統にあぐらをかくこと無く高品質なワイン造りを続けている。
    ファルツ
    ドイツで二番目に大きなワイン生産地域。ラインヘッセンの南に位置し、ファルツの森があるハールト山地が西からの雨雲や冷たい風を遮り、その麓からライン川にむけてなだらかに下る平野にブドウ畑が広がっている。南端はフランス国境で、その向こうはアルザス。ほぼ中央にあるノイシュタットの町で南北の二つの地区に分かれ、北をミッテルハールト(もしくはミッテルハールト・ドイッチェ・ヴァインシュトラーセ)、南をズュートファルツ(もしくはズュートリッヒェ・ヴァインシュトラーセ)と称する。前者はフランス革命で競売にかけられた銘醸畑を、資産家や政治家が購入して高品質なワインを醸造してきたことで知られ、後者は畜産や農業を営む一般的な農家が、もっぱら地元民や観光客が飲む日常ワインを造ってきた。しかしズュートファルツでも1990年代から野心的な若手醸造家達が、優れたワインを醸造して産地の可能性を示してきた。土壌はファルツ全域で雑色砂岩、貝殻石灰質が見られるが、ズュートファルツはとりわけレス土やローム質の柔らかい土壌が厚く堆積しており、ワインも穏やかな印象がある。ミッテルハールトでは所により火山性の玄武岩が分布し、温暖な気候と相俟ってパワフルで複雑なワインが多い。リースリングの他にも近年は赤ワイン(シュペートブルグンダーなど)やフランス系品種(ソーヴィニヨン・ブランなど)でも成功している。

    ドイツ

    ヨーロッパの伝統的ワイン生産国の中でも最も北に位置し、冷涼な気候による酸味と甘味のイメージが支配的だった。近年は温暖化の恩恵を受けてフランス系品種も毎年完熟し、若手醸造家を担い手とした辛口ワインの高品質化がめざましい。ブドウ畑は旧東独の2生産地域を除いてフランス寄りの南西部に位置し、大半がライン川とその支流に広がっている。東部に位置する産地は大陸性気候の影響で夏は暑さと乾燥が、冬は寒さが厳しいが、南西部では海洋性気候の影響を受けて春から秋に雨が降るため、水はけの良い土壌や斜面が高品質なブドウ栽培の条件のひとつとなっている。主要な土壌は約4億年前に生成した粘板岩と、それから約2億年後に生成した雑色砂岩、貝殻石灰質、コイパーから成る三畳紀のトリアスである。前者は北西寄りのラインガウからアールにかけて分布し、リースリングとピノ・ノワール(=シュペートブルグンダー)に独特の個性を与えている。後者は南部のバーデンから東部のフランケンにかけて分布し、ピノ(=ブルグンダー)系の品種とジルヴァーナーやリースリングに優れたものが多い。


    Cidre pét-nat シードル・ペット・ナット 2021

    原材料:リンゴ(ワイナリーの周辺に自生するリンゴ樹の収穫)
    位置:標高350m前後
    土壌:黄色砂岩、石灰質
    醸造:一次発酵が終わる前に瓶詰め。デゴルジュマンあり。
    ワイナリーの周りに自生する、野生のリンゴを使い醸造。デゴルジュマンをしているが、あくまで大きな澱を取り除くのが目的で、若干の濁りはある。総生産量約800本。
    果汁にすると10%以下だが、洋ナシの果汁も含まれている。リンゴの古木は自生しているもので、専門家にも品種わからないものが多い。ベブリンガー、シュトラーセンアプフェル、ヤコブ・フィッシャー、ライニッシャー・ボーネンアプフェルは判明している。
    ¥3,960



    Pi:not Pinot Noir
    パイノット・ピノ・ノワール

    品種:ピノ・ノワール
    植樹:2005年
    位置:標高200m、南向き
    土壌:石灰質レス・ローム
    醸造:ステンレスタンクで1週間マセレーションしプレス。2200Lの木樽で熟成。
    Odinstalのアンドレアスと、長年の友人シュテッフェン・ムグラーの共同プロジェクト。円を表す記号Pi(π)は、彼らの友情の輪や、ビオディナミのサイクル、ワイン好きの集まりをイメージしている。果実味を出すため、10%ほど全房のブドウも醗酵に加えている。次年度より、全房比率を上げて醸造しようかと考え中。
    ¥5500

    Riesling 120 NN 2021
    リースリング 120 N.N.

    品種:リースリング植樹:1988年位置:標高120m、フラット、0.6ha土壌:レス、雑色砂岩醸造約5%は房ごとステンレスタンクに入れて8~10ヵ月間マセレーションその後房を取り出して圧搾し、プレスワインをタンクにもどして熟成。
    生産者の所有する畑のうち、唯一、プファルツの大半のブドウ畑がある、海抜120m付近のなだらかな傾斜の平野にある畑の収穫を使っている。プファルツらしい朴訥とした感じの果実味と、オーディンスタールらしい緻密で上品なテクスチャーで、コストパフォーマンスに優れる。
    ¥6380